高齢者向け “うち” で行う転倒予防運動

外出自粛が続く中、自宅でできる運動を継続することは、健康維持のほか、下肢筋力やバランス維持力の低下を防いで、転倒を予防するためのにとても重要です。

  1. 運動を始める前の準備

①運動できる安全なスペースを確保しましょう

②運動中の転倒を防ぐために、滑りやすいスリッパや靴下を脱ぎましょう

③動かすのは四肢末端から。手や足指のグーバー、腕回し、肩と首回しなど、体の末端部から始めていきましょう。

④運動の回数や強度は、自身の体調に合わせて一日少しずつ上げていきましょう。

2.運動プログラム

体操をはじめる前に

ひとりひとり関節の動く範囲や筋力の強さは異なります。イラストの人と全く同じ体勢にならなくても構いませんので、目標とする身体の部位が伸びているか、力が入っているかを感じながら行いましょう。

特に、以下の点に気をつけて行いましょう。

1.伸びる時、力を出す時は息を吐きましょう。
2.痛みが出るまで伸ばしたり、力を入れたりしないようにしましょう。
3.反動をつけず、ゆっくり行いましょう。

回数や頻度など

ストレッチ
柔軟性を高めるためには、お風呂上がりなど身体の温まったときに行うのが効果的です。ウォーキングや筋カトレーニングの前後に行うとケガの予防や疲労回復につながります。毎日行っても構いません。
筋カトレーニング
一つの動きを反復して行います。初めはほんの数回でも構いませんが、慣れてきたら10回を目安に行いましょう。力がついてきたら、10回を1セットとしてセット数を増やしていきましょう。頻度は、1週間に2~ 3回を目安に行いましょう。
全部をゆっくりとやってみたり、もしくは気になる箇所を部分的に試してみてください。

立位のストレッチ

1.上半身のストレッチ
① 足を肩幅に開き、両手を胸の前で組みます。
② 手の甲を天丼に近づけるように上げながら伸びます。
2.体側のストレッチ
① 1の姿勢から上体を右側に倒していきま魂顔や胸は前に向けたまま伸ばします。
② 体を戻して一度手を下ろします。反対側も同じように行います。
3.背中と胸のストレッチ
① 足は肩幅に開き、両膝を少し緩めます。
② 両手を胸の前で組み、手の甲を前方に出していきます。頭は腕の間に沈め背中を十分丸めます。
③ 手を離して体を起こします次に両手を背中側で組んで、斜め下にひきま九顔は斜め上を見て、胸を天丼に向けてしっかり開きます。
4.ふくらはぎのストレッチ
① 両足を揃えて立ち、片足を大きく1歩後ろにひきます。両足のつま先と踵は平行になるように気をつけます。
② 両足は前足の太ももに添えて前足に体重をかけます。後足の膝は伸ばして踵を床につけます。頭から踵までを真っ直ぐにして伸ばします。
③ 後ろ足を一度戻して、反対の足も同じように行います。
5.ふともも(前面)のストレッチ
① 右手で壁などを支え、横向きに立ちます。
② 左手は左足首を持ち、踵をお尻につけるようにします。左膝を後方にひくように仲ばします。
③ 足を一度戻して、反対の足も同じように行います。

椅子でのストレッチ

1.首のストレッチ
① 頭を右側に倒し、右手を左耳のあたりに添えます。
② 左手は楽に下げておきます。右手の重みを使い、頭を十分右側に倒して伸ばします。
③ 一度頭をまっすぐもどし、反対側も同じように行います。
2.体側のストレッチ
① 右手は椅子の縁を持ち、左手は天丼に向けて上げます。
② 左手を右側に倒しながら伸びます。左側のお尻が浮かないように気を付けます。
③ 体を戻して一度手を下ろし、反対側も同じように行います。
3.脚(後面)のストレッチ
① 右足の膝を伸ばし、踵を床につけてつま先を天丼に向けます。
② 両手は足の付け根部分に添え、背筋を起こします。体を前に倒しながら仲ばします。
③ 体を起こして右足を戻し、反対側も同じように行います。
※図中の―――線は、力を入れたり伸ばしたりする部分を示しています。

椅子での筋力トレーニング

1.ふともものトレーニング
① 背もたれから体を起こして腰掛けます。両手は椅子の縁を持ちます。
② 右足の膝を伸ばします。ふとももに力を入れて、そのまま5秒維持します。
③ 足をもどし、反対側も同じように行います。
スクワット
① 椅子から立ち上がり半歩ほど前に出ます。離れすぎないように気をつけます。
② 足は肩幅に開き、両手は前方に伸ばしてバランスをとります。
③ 深く椅子に腰掛けていきます。座り込む前に立ち上がります。
④ 胸を張り、膝はつま先から前に出ないように気をつけます。

3.ふくらはぎのトレーニング
① 椅子の背面に立ち、横を向いて右手を背もたれに添えます。
② 足は肩幅に開きます。両足の踵を高く上げ、その後ゆっくり下ろします。
③ お腹やお尻にも力を入れて、姿勢はまっすぐに保ったまま行います。

マットでのストレッチ

1.お尻のストレッチ
① ざっくりと大きくあぐらを組み、両手の甲を床につけます。
② 手を前方に進め上体を倒しながら仲ばします。
③ ゆっくり体を戻し、足を入れ替えて同じように行います。
2.脚(後面)のストレッチ
① あぐらの姿勢で外側にある脚を横に伸にばした足の方に向けます。
② 両手は伸ばした足の付け根に添えます。上体を倒しながら伸ばします。
③ ゆっくり体を戻し、反対の足も同じように行います。
3.股関節のストレッチ
① 両膝を開いて曲げ、足の裏と裏を合わせて引き寄せます。
② 両膝を軽く弾ませて力を抜きます。
③ 膝を止めて、背筋を起こし、上体を前に倒して伸ばします。
4.腰のストレッチ
① 両膝を立てて座ります。横から見ると足で三角形が作られた姿勢になります。
② 両手は後ろについて体を支え、ゆっくり両膝を右側に倒して仲ばします。
③ 膝を一度戻し、反対側も同じように行います。
5.上腕のストレッチ
① 楽な姿勢で座り、右手を前方に伸ばします。
② 右手をそのまま胸に寄せ、左手で右肘を押さえます。
③ 両手を一度下ろし、反対側も同じように行います。

マットでの筋カトレーニング

1.腹筋のトレーニング
① 仰向けに寝て両膝を曲げ、足で三角形を作ります。
② 両手はふともものあたりに添え、おへそを見ながら肩甲骨が浮く程度まで上体を起こします。
③ ゆっくり体を戻します。
2.お尻のトレーニング
① 仰向けに寝て両膝を曲げ、足で三角形を作ります。両手は体の横で床につけます。
3.背筋のトレーニング
① うつぶせに寝た状態で、両手は前方に伸ばし、足は肩幅に開きます。
② 右手と左足を同時に上げます。
③ ゆっくり戻して、反対側(左手と右足)も同じように行います。

国立長寿医療センター研究所 疫学研究部 小坂井 留美

「看護ネット」でも公開しています。

http://kango-net.luke.ac.jp/koureisya_kango/tentou_kossetu/taisou.html

作成 聖路加国際大学大学院老年看護学教授 亀井智子